研究テーマ

セミインタクト細胞リシール技術を用いた実用化研究

遺伝子やタンパク質は、細胞内において特定の「場所」、特定の「タイミング」でその機能を最大限に発揮します。そのため真の機能や制御メカニズムを研究するにはその物質が機能する環境を考慮した実験システムが必要不可欠です。
私たちの研究室では、細胞質の置換を可能にするセミインタクト細胞リシール技術を開発し、光学顕微鏡による最先端の可視化技術と組み合わせた、世界に類をみない独自の可視化解析システムを構築しています。これは、従来の方法では困難だった単一の細胞内で起こる機能の「場所」と「タイミング」を解析することにより、細胞内ネットワークの制御メカニズムを解明しようという新しい試みです。そしてその知見は、新たな創薬支援システムの構築へとつながっています。

  • 「病態モデル細胞」創成と解析プロジェクト
    生活習慣病のモデル個体(マウス等)から調製した「病態細胞質」とセミインタクト細胞リシール技術を用いて、病態細胞質環境を持った「病態モデル細胞」を作成します。作成した「病態モデル細胞」を用い、真の病態細胞質環境での様々な生命現象を可視化解析しています。具体的には、糖尿病や高脂血症(脂肪異常症)の細胞内でタンパク質・脂質・mRNAなどの輸送・局在の撹乱、オルガネラ機能の撹乱、遺伝子発現制御機構の撹乱、エピジェネティックス制御機構の撹乱、代謝制御系の撹乱、シグナル伝達経路の撹乱、などです。現在、本システムを用いて、糖尿病や癌の発症に関わると予想される複数の遺伝子に対してその機能解析中です。また、「リシール細胞」の細胞工学的応用も進めています。
  • 「病態モデル細胞」創成と解析プロジェクト
    「病態モデル細胞」解析に使用する(または、利用できる)様々な周辺技術開発を行っています。光学顕微鏡作成技術、可視化プローブ開発技術、画像解析技術、タンパク質工学技術、生体シミュレーション技術、バイオインフォマティクスによる転写・翻訳制御ネットワーク解析・推定技術、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術など、がそれに相当します。特に、「病態モデル細胞」を利用したマイクロアレイ解析、DNAメチル化解析、網羅的メタボローム解析、プロテオーム解析結果から、有用な疾患関連タンパク質群を効果的に抽出する手法の開発を精力的に行っています。
  • 遺伝形質の発現は、基本的にはそのDNAの一次配列に依存しています。しかし、最近、DNAの配列の変化を伴わない後天的なDNA修飾(DNAのメチル化、ヒストンのアセチル化など)が特定の遺伝子発現を制御していることが判ってきました。この様な、クロマチンへの後天的な修飾による遺伝子発現制御機構を「エピジェネティクス(Epigenetics)」と言い、生命科学の新しい一大研究領域を形成しつつあります。当研究室では、分化や生活習慣病態発現に伴う核構造・クロマチン動態変化とエピジェネティクス変化を、最新のイメージング技術とセミインタクト細胞リシール技術を駆使して解析し、その知見を創薬・医療に応用したいと研究を進めています。

最先端イメージング解析技術による単一細胞内遺伝子・タンパク質ネットワーク研究

私たちは、タンパク質の一生の可視化解析系の構築と同時にこれらの解析系を駆使した以下の個別的テーマも進めています。これらのテーマには動物細胞が備える機能のなかでもより高度であると考えられ、それゆえ高次の生命現象や疾患とも直結する細胞機能を選んでいます。いずれの細胞機能も、タンパク質の転写、翻訳、輸送・ターゲティング、分解の巧みなコーディネートが必須であると考えられます。 これはゲノム創薬や再生医療への応用を視野に入れたプロジェクト型研究の一環です。

  • 神経変性疾患(アルツハイマー病など)、生活習慣病(糖尿病など)、がんなどの疾患と酸化ストレス・小胞体ストレスとの関連をターゲットにして研究を進めています。ストレスを関知して蛍光を発する細胞系やストレス負荷時に局在を変えるタンパク質・mRNAなどをプローブにして、細胞ストレス応答を制御するタンパク質ネットワークを明らかにします。ストレス応答メカニズムの解明とその知見を創薬・診断技術へ応用することが目的です。
  •  ニューロンや上皮細胞の極性形成は協奏的な細胞骨格・オルガネラの再配置、膜の形成・消失現象と考えられます。協奏的に生起する生命現象を素過程に分解 して可視化・再構成することは、セミインタクト細胞アッセイの得意とするところです。現在、上皮細胞系における細胞接着の形成・維持機構に関わるタンパク 質ネットワークの解明を目指しています。上皮細胞の接着制御機構の撹乱は、分化や癌転移など様々な細胞の高次機能発現に関わっています。メカニズムの解明 とその知見を創薬・診断技術へ応用することが目的です。
  •  私たちはこれまでに細胞周期依存的なオルガネラバイオジェネシスを可視化解析し、染色体の分配とは異なる全く新しいメカニズムを明らかにしてきました。 特に、細胞分裂時にシングルコピーのオルガネラ(ゴルジ体や小胞体・核膜)が娘細胞へどのように均等分配され、それぞれの娘細胞内でどのように再構築され るのかをセミインタクト細胞系を用いて研究しています。細胞周期依存的なオルガネラの分配制御機構は、逆に細胞周期の進行に大きな影響を及ぼすことも判っ てきました。つまり、オルガネラ分配機構の撹乱は癌をはじめとする様々な疾患にも関わっています。メカニズムの解明とその知見を創薬・診断技術へ応用することが目的です。

ハイスループット化によるヒト疾患のヒト疾患の診断・創薬
スクリーニングへの応用

私たちの研究室では、「セミインタクト(リシール)細胞チップ」の作成とそのチップを駆使した多様なアッセイを全自動化する「セミインタクト(リシール)細胞自動アッセイステーション」を構築中です。これは、リシール細胞を用いて構築した様々なアッセイ系をヒト疾患の診断やメカニズム解明、創薬のためのタンパク質・遺伝子・ケミカルライブラリーのスクリーニングに応用するためです。 このアッセイステーションを駆使して目的とする細胞を再現性良くリシールし、かつその中で生起する高次生命現象をイメージング、または発光計測することで、迅速かつ定量的な解析が可能になります。

セミインタクト細胞チップ自動作成装置

セミインタクト細胞チップ自動イメージ

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